フリューゲル・デス・フレースヴェルグで起こる日々の出来事・・・
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師匠と呼ばれた日
         

「ロイドさん、何でおんなじものを毎日食べ続けたらいけないんスか?」

レミにそう聞かれたのは、レミを拾ってきて一週間ばかり経ったときだったでしょうか。

「ギョッ?いきなり何を言い出すんです?レミ。それに、ここではシェフと呼びなさいと言ったでしょう。」

「だって、俺、昨日の牛のスネ煮込みがすっごく美味しくて、一生食べ続けたいくらいだって思ったッス!
 でもロ・・・シェフは、次の日には別のメニューを考えて作り始めるじゃないッスか。」

ギョギョ、なかなか面白い意見ですねぇ。
自分一人で料理をしている時には生まれない発想です。
さて、何と返したものか・・・。

「やっぱり、同じもの食べ続けると飽きちゃうからッスか?でも俺なんかはずっと同じでも飽きないッス!」

「レミ。飽きるとか、飽きないとか、そういう問題じゃないんですよ。」

その返事に、目を輝かさせてググッと私に詰め寄るレミ。
何を言っても信じ込みそうなのが逆に怖いくらいですねぇ。
ふむ、さて・・・・・コホン。

「良いですか、レミ。食事は食べる人の身体と、心を作る大事な行為なんです。細い髪の毛と、頑丈な骨や歯が同じもので出来ているとは思わないでしょう?限られた食材しか食べていないと、体のバランスがどこかおかしくなってきてしまいます、ですから人は出来る限り多くの食材を一日に取り入れなくてはいけませんし、生涯でどれだけ多くの食材に出会えたか、どれだけ多くの質の高い食事をしてきたかでその人の寿命すら変わってくるんです。それに何より、美味しい料理は人の心を穏やかにします。未知なる美味しい料理に出会ったとき、人は驚きと幸せの表情でいっぱいになるでしょう?そんな食事の最中に怒り出す人間はいませんし、今まであった悩みすらどこかへ飛んで行ってしまいます。そんな奇跡のような体験を何度でも起こすために、料理人は工夫を凝らして毎日のメニューを考え、私のような一流の料理人はまだ誰も食べたことのないような新しい料理を作ろうと日々画策しているのです。初めて出会う本当に美味しい料理の感動を与えられる料理人こそが本当の才能を持った一握りの料理人なんです!そうそう、そういえばガサツな人ほどすぐに『おい!何でもいいから肉持って来い!あと酒!』とか品の欠片もないような台詞を口走りますしねぇ、あれは本当に肉と自分の好きなものしか食べてこなかった人間の結末じゃあないかと思ったりもするんですけどね、この間なんか・・・」

「うおおおおおおおおお〜〜!!!さすが、し、し、し、師匠!!なんだか全部聞き取れないけどすっごく良いこと言ってるってことだけはしっかり伝わったッス!俺すごすぎて涙が出てきたッス!グスッ、聞き取る量が多くてメモが追いつかないッス〜〜!!!」

がしっっ!!
ギョ、ギョギョギョ〜〜〜〜!?し、師匠!?
な、なんとなく伝わったのはいいですけど、レミ!しがみつくんじゃありません!!

「だぁって俺、感動したんスもん!ズビッ、だからこうやって師匠にずっと付いていこうって思ったんス!!ズズッ」

「ギョギョ〜〜〜ッ!!は、鼻水を拭きなさい!!あああでもコックコートはやめてください!!とにかく!離れて!芋の皮むきでもしていてください〜〜〜〜!!!」


ああ、懐かしいですねぇ。
そして、レミは今も昔も変わりませんねぇ。久しぶりに袋いっぱいの芋の皮むきでもムダにさせてみましょうか・・・。



料理長 ロイド - -