フリューゲル・デス・フレースヴェルグで起こる日々の出来事・・・
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再度の喪失

         

しとしとと雨が降る灰色の空。
館は異様な静けさを纏っていた。

こういう日に限って、仔犬は親の後を素直について行く。


外へ出られない代わりに、使用人たちは早足に廊下を横切る。

 


地下の備品庫から、うっすら埃が被った燭台を持ち出す。
それすら使わないと、追悼パーティは間に合わない。

 

 


eins

縁の乾いた綿埃を指先で撫でる。

 

zwei

両腰に下がる銃と同じ材質なのに、鈍く光る燭台。

 

drei

古い蝋の塊りがこびりついている。

 

vier

逃げる者を追う足音が聞こえる。

 

fünf

指先まで真っ黒になった。

 

sechs

箱の内側に同じ記号が3つ並んでいる。

 

sieben

左で見えるのは夜空の星だけ。

 

acht

木箱の上を蜘蛛が這う。

 

neun

ここへ来てから、遠くで水が滴る音がしている。


zehn

これで充分。

 

 

 

依頼された分の燭架をまとめ、地下室を後にする。


しかし、それらが入っていた木箱に違和感を感じ、もう一度、薄暗い部屋へ爪先を戻す。

開いたままの扉からの頼りない灯が照らす箱の底を覗く。


左眼に一瞬だけ、鋭い痛みが走った。

 

 

 

11個目を見つけた。




従僕 ユーリ - -