フリューゲル・デス・フレースヴェルグで起こる日々の出来事・・・
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記憶の花





 あれからどれくらいの時が経ったのか。
 そう無意識に意味もなく考えて仕舞う時がある。忘れもしない筈だというのに。


 忘れない。そう、忘れるわけがないのだ。


 そして、その無意味な思考の核には、自分の無力さが刻まれている。


 同じ場所から動こうとしなかった慙愧に耐えない。

 

 

 


 毎日必ず同じことを考える。


 誰に話すわけでもない。


 

 

 

 決まって、庭先に咲く薔薇を見て一人で思考を巡らせる。
 品種はイヴというものだ。


 あまり巷で見ることもなく、私の庭でも隅にひっそりと顔を出している程度。


 だが、ひどく目立つ。

 


 薔薇といっても、色は赤や青などといった主張の激しいものでは無い。

 

 


 色?
 そうだな・・・

 

 

 


 ・・・シャンパンゴールド。

 

 

 

 


 淡い金が風に揺れる時は、重なるものが脳裏を過る。

 


 その瞬間にいつも不意に目を逸らし、背を向けて窓辺を後にする。

 

 


 今も、また。

 

 

 

 

 

 


 「クラウス様。
 お忙しい所失礼致します。」


 「・・・ハインリッヒ。」

 


 歩き出した所で呼び止められる。
 脇に書類を抱え、スッキリとした佇まいで私を見た。

 


 「後程、お時間を頂けますでしょうか。」


 「あぁ、解っている。
  例の件だろう。1時間後に来てくれ。」


 「かしこまりました。」

 

 
 そう言うと、無駄の無い動きで丁寧に頭を下げた。

 


 「そういえば、レオンを見なかったか。」


 「え? ・・・いえ、本日はまだ見かけておりませんが・・・」

 

 


 奴め。
 またエリーゼの診察に遅れる気か。

 

 


 「フン・・・、また何処かフラフラしているな。
 見かけ次第で即刻私の所へ来る様にと伝えろ。


 耳に届いていない様子なら引きずってでもお前が連れてこい。
 リクなりロイドなりを手伝わせてもいい。」


 「・・・はい。かしこまりました。


 それでは、後程お部屋までお伺い致します。
 失礼致します。」

 


 ハインリッヒは落ち着いた立ち居振る舞いで踵を返してその場を去っていった。

 

 


 「・・・はぁ」

 

 


 少し頭痛がする。
 奴らが部屋に来る前に少し休んでおこうか。


 あぁ、ハインリッヒに紅茶を頼んでおくんだったな・・・。
 


 
 




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