フリューゲル・デス・フレースヴェルグで起こる日々の出来事・・・
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兄を思ふ気持こそをかし
         

では、このパイ生地を少し寝かせて、と…。


『コンコン。』


厨房の扉をノックする音。

戸を開けてみると意外な顔がありました。


…ミカエラ?どうしました?


立っていたのはメイドのミカエラ。

相変わらず無表情のまま、手には…ボウルと、ミルク?



「あぁ、もしかしてこの間のデザートが食べたいのですか?」



と、語りかけても瞬きひとつせずにじっと見つめてくるだけ。

答えは、イエス、ということでしょうか。

丁度仕込みも一段落したところですし、まぁ良いでしょう。



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カットしたフルーツといくつかの果汁を混ぜ合わせていく工程を興味深そうに見つめるミカエラ。


他の兄弟、マリアナやユーリに比べると少し感情が見える気がします。…ほんの少しですが。



「…ミルクを加えて固まる仕組みですが、果物の食物繊維がミルクに含まれるカルシウムと結びつくことで凝固する仕組みだそうです。

詳しいことはドクトルにでも聞いて下さい。…さぁ、出来ましたよ。」



仕組みも味も、私の作るものとしては面白味に欠けますが、

珍しいお客様ですから良しとしましょう。


ボウルを受け取ると、やはり無表情のままぺこりと一礼。

どこから取り出したやらスプーンを二本備えて厨房を出ていきました。



おや…二本?



彼女が気を遣いそうだと言えばエリーゼお嬢様か兄姉くらいでしょうが、

まぁ、ここ最近の様子を見る限りですとユーリでしょう。

妹は妹なりに兄の心配をするものですから。





兄…、


兄、ですか…。



『心配しなくてもウォーレンは無事だ。早ければ年内には戻る。』

と、クラウス様に言われたからには兄は無事なのでしょう。

私よりも優秀で、何より強く。

兄とは違った才能で兄を支えようと、私にとって最高の才能である料理の勉強を始めましたが、

兄が不在の今、私は、兄の代わりを務められているのでしょうか。

クラウス様の言う、『極秘任務』とは、一体…?



料理長 ロイド - -