フリューゲル・デス・フレースヴェルグで起こる日々の出来事・・・
嵐の前
         

追悼パーティーの時間が近づき、庭園には徐々にお客様が集まってくる。

ブルーノとリクがお客様の対応に追われている。

ブルーノは流石というべきか お客様の対応は手馴れたもので、談笑をしながらスムーズにお客様をお通ししている。


リクはといえば、相変わらず人と話すのが苦手なのか、

そっぽを向いてぶすっとした顔をしている。

そんな顔をしていると…

ほら…

ブルーノのげんこつが飛んでくる。

そんな、日常と変わらぬやりとり


私はといえば、お客様に挨拶をして、会場までご案内をする。

ご案内した中に、気になるお客様が二人いた。

一人は、緑色のドレスを着た美しい少女 ずっとエリーゼ様のことを気にかけてくださっていたのが、すごく印象的だった。

もう一人は、金髪の綺麗な顔をした美少年

お部屋までご案内を終えた別れ際、ふっと不敵な笑みを浮かべた……ような気がした…

気のせいだろうか…

そして…

また、入口までご挨拶に向かう

扉を開けて

「本日はようこそいらっしゃいました。執事のハインリッヒ・マヌエル・グライナーと申します。」



執事 ハインリッヒ - -
回想
         

とても長い1日だった。
 
色々な事が起こった1日だった。。
 
例年のように、今年も穏やかにリーネ様の追悼パーティーを終えられると思っていたのに…

たった1人の来客者によって
パーティーは滅茶苦茶になってしまった。
 
彼が、そこで何を言ったのかは分からない…

彼が、どんな魔法を使ったのかも分からない…

ただ…
彼がそこに居たという報告を受けている。
 
ただそれだけ。



あれから、

エリーゼ様がお部屋から出て来る事はなくなった。
 
食事もほとんど召し上がっていないようだ。。
 
あんなに、素敵な笑顔で笑っていたのに

今はもう見る影も無く、ずっと泣いているのだという…



そう、そして
エリーゼ様が錯乱して、倒れられた数時間後…
 


もうひとつ起こった、
あの事も…
 
クラウス様を取り巻く環境の中で、
 一体何故、あのような出来事に至ったのだろうか。

館の住人、使用人、プラエトリアニ達…

彼らは一体どんな風に、
何を思い、
追悼パーティーの日を迎えたのだろうか。。




執事 ハインリッヒ - -
それぞれの想い
         

明け方…

外はまだ薄暗い

屋敷の巡回中、
今日はやけに多くの者達が起きていることに気付く。


庭では、1つのドッシリとした大きな影と、
その周りをウロチョロしている1つの影が見えた。


厨房では、ロイドとレミが本日の料理の下ごしらえをしている。
ロイドの顔はいつも以上に真剣で、レミもバタバタと忙しそうだ。


レオンの部屋の前を通ると、灯の光がドアの隙間から漏れている。
いつものように、本を読んでいる途中で寝てしまったのか…
それとも、リーネ様の命日に何か想うことがあるのだろうか。


エリーゼ様の部屋の前を通りかかると、灯は消えているが
最近は随分とうなされていると報告を受けている。
本日はゆっくりと眠れているのだろうか…


クラウス様の部屋の前を通ると、やはり灯がともっているようだ。
誰よりも家族想いなクラウス様…
気負うことなく、皆様を迎え入れましょう。


窓の外では陽が昇り始めている。
あと数時間後にはリーネ様の追悼パーティーが開催される。

さて、どんな1日になるのか。
皆様を気持ちよくお迎えいたしましょう。



執事 ハインリッヒ - -
shrewd man
         

クラウス様の食器を片付ける。
 
また今日も4分の1程度残している。
 
リーネ様の追悼パーティーまであと2週間

毎年のことではあるが、この時期が近づくとクラウス様が悲痛な表情を浮かべることが多くなる。
 
いくら歳月が流れても、
クラウス様が苦しみから逃れられることはできないのですね…



自室に戻り、招待客のリストに目を通す。

各名家の当主やご子息、ご令嬢が名前を連ねている。
 
ふとある人物の名前の前で目が止まった。
 
どこかで、聞き覚えのあるその名前…

そうだ、
以前クラウス様がヘイスティングス時代に、ものすごく頭の切れる先輩がいるとおっしゃっておりました。

クラウス様が一目置く人物…

一体どんな方なのか?
 
パーティー当日、お会いできるのが楽しみです。



執事 ハインリッヒ - -
リーネ様追悼パーティーのご案内


         

                 
ルーデンドルフ伯爵家ご息女

リーネ様 追悼パーティーのご案内


 まだまだ暑い日が続いておりますが、皆様には一層ご活躍のこととお慶び申し上げます。
さてこの度は、例年同様ルーデンドルフ伯爵家ご息女、(故)リーネ様の追悼パーティーを左記のとおり盛大に開催いたします。
 つきましては、リーネ様ご存命の折に大変お世話になった皆様へのご恩返しになれば幸いでございます。
 ○ ○ 様におかれましても、是非ご家族様お揃いでご来宅いただきますよう、心よりお待ち申し上げております。


  日 時  9月15日 日曜日  ○○時〜

  場 所  ルーデンドルフ伯爵家にて


                              以 上


ルーデンドルフ伯爵家 
執事 ハインリッヒ・マヌエル・グライナー




執事 ハインリッヒ - -
想い
          

クラウス様…

やはり、まだ後悔なさっていらっしゃるのですね。
 
貴方は昔から、誰よりも真っ直ぐで家族想いなお方…
 

ですが、

 
リーネ様を救ってあげることができず、苦しんでいるのは貴方だけではないのですよ。


 
貴方は気付いていらっしゃいますか?
 

エリーゼ様があの日以来…

どんなに自分が苦しくても、笑顔を絶やさず明るく振舞っていらっしゃる事を、

エリーゼ様がどれだけ貴方の事を心配されているかという事を…

 

何もできず悔しい思いをしているのは、ゴードンさんやウォーレン、私も同じでございます。



だからこそ、

リーネ様に喜んで頂ける様な、追悼パーティを開催いたしましょう。
 

空の王者の様に
威風堂々たる貴方様でいて下さい…



執事 ハインリッヒ - -
anxiety
          

館の中はお客様を迎え入れる準備も整い、とりあえずは落ちつきを取り戻す。

これもひとえに、寡黙だが依頼した仕事をきちんと確実にこなすモーゼス、

そして、無表情だが冷静に物事を判断し最善の方法で仕事を進めてくれる、メイド長のマリアナ達のお陰だろう。

彼女の兄弟である、ユーリ、ミカエラも無機質ではあるが、
その仕事は、まるで機械が行ったかの様に1ミリの狂いもない程に正確である。


流石はゴードンさんと言ったところか。


最近はエリーゼ様の体調も良さそうで、ひとまずは安心なのだが


一つだけ気がかりなことが…





クラウス様




最近は、随分とお疲れのご様子




私には見守る事しかできませんが、くれぐれも無理をなさらないでください。

貴方様にもしもの事があったら…


いや…余計な事を考えるのは止めましょう。




空一面を雨雲が覆っている。

明日は晴れるといいのですが…



執事 ハインリッヒ - -
1羽の鷹
        

「そろそろ馬車が到着する時間ですね」

人知れず呟きながら懐中時計の蓋を閉じる。

執務室からエントランスホールへと続く
行き慣れた廊下の向こうにコックコートが見えた。

見事に研がれた包丁を腰から下げ
独り言にしてはやけに大きい仏語混じりの専門用語を
歌うように口にしながら、思案顔で横を通りすぎてゆく。

すれ違いざま、口元にあてた手の隙間から覗いた笑みが
少々不気味な印象を漂わせていた。

こちらに気づかず通り過ぎる彼の後ろを
少し遅れて追いかける少年。

私を認め立ち止まり、慌ててコック帽を脱ぎ、
癖のついた髪を片手で押さえながら深々とお辞儀をする。

目を伏せ軽く会釈を返す間に
少年はまた駆け出していった。

シェフのロイドとその弟子レミ――

何とも不思議な組み合わせの師弟。
いや、むしろ師弟とは、こういったものなのだろうか。


ふと、開放された大きな窓の向こうから
耳慣れない単語を呟く、聞き慣れた声が響いてきた。

中庭に置かれたベンチに腰を下ろし
恍惚とした表情で空を眺めている青年。

天才的な頭脳と旺盛な好奇心
そして、その飽くなき探求心―

医術の心得もあることから、
人は彼をドクトル・レオンと呼ぶ。

屋敷の奥深くで日夜研鑽を積んでいると言えば
随分と聞こえが良いが、
実際、当家の資産を湯水のごとく使い、
わけのわからない研究に没頭するただの変人―
いや、これは言い過ぎか。

私には彼が何を考えているのかわからない。

エントランスの扉の前で改めて思う。

この館には変わり者が多い。
職務とはいえ彼らをまとめるのは決して容易な事ではない。

美しい細工が施された重厚な扉を大きく開け放ち、
眼下に広がる見事なまでに整備された広大な庭を眺める。

そう、ここは・・ルーデンドルフ伯爵邸―

フリューゲル・デス・フレースヴェルグ


アプローチの向こうに見える鉄の門扉は未だ固く閉ざされている。
どうやら伯爵の馬車は到着していないようだ。

見慣れないシルエットに目を凝らすと
鷹が一羽、門柱にとまりこちらを見つめている。

あれは―


「バカヤロウ!!何度言ったらわかる!!」


庭師の罵声に驚き、鷹は大きな翼を広げ大空へと飛び立っていった。




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