フリューゲル・デス・フレースヴェルグで起こる日々の出来事・・・
ricordo 〜追憶〜




「おらおら、どうした?バンビーノ!

そんなへっぴり腰じゃ全然当たんねぇーぞ!」


「ハァ、ハァ・・・クソッ!」


「バンビ〜その程度じゃプラエトリアニを名乗るにゃ100年早ぇなぁ〜。

ガッハッハッハッハッ! 俺が現役の時にゃなぁー」




ボ カ ッ ! !




「・・・っぐ?!」


「・・あ!、へへっ・・・当たった・・・!」









・・・・痛ってぇ・・・まさか一発もらっちまうとはなぁ・・・

でも・・久しぶりだな。殴られて嬉しかったのは・・・





プラエトリアニの一員としてドュフナー隊長とやりあってた頃・・・

隊長は本当に強かった。

鋼のような体躯に石のようにごつい拳、そしてとにかく頭が切れた。

弟のトゥーリオ共々何度も投げ飛ばされ、

ぶちのめされたが・・・・充実した日々だった。



ウォーレンとロイドも負けず嫌いで手を焼いたなぁ。

ウォーレンがやられるとロイドが泣きわめいて、

ロイドがやられるとウォーレンが血相変えて飛びかかってきやがった。

何度も。 何度も。



生傷が絶えなかったが、泣いて笑って館ん中は賑やかだったな。


あんな 時間が  ずっと  続くと  ・ ・  ・   ・










「 ---親方! おい、親方!!」


「ぅん・・・・?」


「何うとうとしてんだよ。こんなとこで寝たら風邪ひくぞ。俺部屋戻っから。」


「あぁ・・・・バンビー・・っと・・・、リク!」


「・・え?」


「また、明日な。」


「・・・あぁ。おやすみ。」




ちょっくら飲み過ぎちまったか。

傷に沁みるな・・・



何度も繰り返した夜。数多の傷跡。

燻らせた紫煙に浮かんでは消える顔、顔、顔。




・・・届かなかった想い。



もう戻ることはない日々・・・・。



庭師 ブルーノ - -
avvenire 〜未来〜 
          


「----おい、バンビーノ!

植え穴の中に落ち葉と鶏糞を一緒に入れるんじゃねぇ!

ったく・・・さっき言った事を聞いてなかったのか?」



リクの奴、随分仕事も覚えて手際もよくなったんだが、

時折、“心ここに在らず”な時がある。


その訳は・・・あの閉め切った窓の向こうか・・・



エリーゼ嬢ちゃん、・・・いや、もうお嬢様と呼ぶべきか・・・

このところずっとふさぎこんでらっしゃるようだ。



無理もねぇ・・・

もうすぐ二度と思い出したくも無ぇ“あの日”がやってくる。



まぁ、俺ごときが心配するような立場じゃねぇってのは

分かっちゃいるんだが・・・な。






「おーーーい、バンビーノ!

エリーゼお嬢様の部屋の花を変えてきてくれねぇか。」


「あ、あぁ。・・・でも、まだ・・・」


「今日はこれで上がっていいや。後ぁ俺がやっとく。」


「いいのか・・・?」


「晩飯までにゃ戻って来いよ。

でなきゃ、おめぇの分まで全部俺が食っちまうからな。」


「な・・おい!ふざけんじゃねぇ!!ったく・・・・悪ぃな親方。」


「早く行けよ。ウロウロされると邪魔でしょうがねぇ。」


「うるっせーよ!じゃあ・・・行ってくる!」






フッ・・・がさつで品が無ぇ奴だが・・・

今、おめぇがやれること、やるべきことをやってやんな。


簡単なことさ。


大切なひとの傍にいて守ってやる。



大切なものを為す術なく失った俺たちは

慙愧と悔恨の鎖に縛られ続けている。

おめぇにはそれを断ち切ることができるんだ。



人は過去に生きるべからず。


リクよ。お前は未来を切り拓いていけ。






庭師 ブルーノ - -
忙中閑有り  〜Gli uomini più attivi hanno più tempo libero.〜
         





  パチッ

                   パチッ      
 
          パチッ
 
パチッ         
          パチッ
                 パチン

 
 

う〜ん、と、もう少し風通しよくするか・・・・

この蔓薔薇は段階的に開花をずらしたほうがいいな。

ここまで広げた厚みを活かさない手はねぇ。



で、正面のオベリスクは華やかに一斉咲きに仕上げよう〜♪

よしっ、一気に落としちまうか!




この剪定こそがまさに庭師の“醍醐味”ってやつだ。
 
 
後の成長をイメージしつつ古く弱った枝や無駄に伸びた枝を断ち切る。
 
そして必要な枝を伸ばすことでさらに美しい薔薇を咲かせて、
 
この薔薇園全体の新陳代謝を促す。
 
 

樹にストレスを与えちゃいけねぇが、好き放題にもさせてもいけねぇ。
 
・・・・何だか人間と一緒だな。

なぁ?・・・って、おい・・・・



またリクの奴どっか行きやがった・・・・




さて、パーティーまで間が無ぇし、暗くなるまでに仕上げるか。


と、その前に一服一服・・・と♪




庭師 ブルーノ - -
Blue Rose
         

「奥様、ここは暑いですからどうぞ館の中へお入りください。

御心配なく! パーティーで用いる薔薇の手入れは万端でさぁ。」




今は亡きリーネお嬢様の追悼パーティーまで後半月余り。

奥様も心なしか落ち着かないご様子だ。



こまめな水遣りと其々の株に合わせての追肥と秋咲きに向けての剪定。

今後の気温や天候を予測した上で計画していかなきゃなぁ・・・


まぁ、この辺は経験と長年の勘に拠る部分が多い。

バンビーノにはじっくり時間をかけて教えていくか。




薔薇ってのはとにかく手がかかる。

なかなかこちらの考えている通りには育っちゃくれねぇ。

だから面白えんだが・・・


・・・何年も試行錯誤しても、どうしても出来ねぇ事もある。




青い薔薇。




文献を調べ、苗を取り寄せ、

考えられる様々な交配を繰り返してはみたが、まったくお手上げだ・・・


まさしくその花言葉どおり・・・「不可能」、「有り得ない」・・・だな。




・・・もう、随分前の話だが、ドュフナー氏が奇妙なことを言っていた。


深い森に包まれたとある館には

見事な青い薔薇が咲き誇っているという・・・

しかしその薔薇はその地を離れると途端に枯れてしまうんだとか・・・



フッ、その話が本当ならば、一度見てみたいもんだな・・・





しかし、ヴェロニカ奥様・・・相変わらず美しい御方だ。

この館に来られて四半世紀にもなるが、

その清楚な美しさは微塵も変わりねぇ。



この館に咲き誇る真の一輪の薔薇・・・

・・・何て馬鹿なことを考えている場合じゃねぇ。


優雅な貴族の奥様と小汚い庭師か・・・



フッ・・・有り得ねぇ。



・・・まさに「青い薔薇」ってやつだ。






庭師 ブルーノ - -
Scar 〜傷跡〜

         




「  ・・・  やめて、  やめて! ブルーノ!!」



「どいてくだせぇ!坊ちゃん!

可哀想だが・・・人間に咬みつく犬は殺さなきゃいけねぇ!!

それが人間のためでも、犬のためでもあるんでさぁ・・・!」



「っ・・・・殺さないで・・・!

・・・・僕が、最後まで面倒を見るから・・・

絶対に殺さないで・・・・殺さないで・・・・!!!」









 ・・・ん ・・ぅん ・・・・・また・・か。




この時期になると決まって見る夢・・・・

もう十数年も前だが今でも鮮明に焼きついてる。



人間に咬みつく犬は・・・可哀想だが殺さなきゃいけねぇ・・・

それが・・・人間のためでも、犬のためでもあるんだが・・・・



・・・・坊ちゃんは血まみれになりながら、

涙を流して銃口の前に立ちはだかった。






“ 大切なものは何が何でも守る ”






主として、最も大切な気概を坊ちゃんは子供ながらに持っていた。

それだけに、あの時のことが許せなかったのか・・・・





リーネお嬢様・・・・





坊ちゃんに刻みつけられた傷跡は・・・・あの時のものだけじゃねぇ・・・・





庭師 ブルーノ - -
Cricket 〜蟋蟀〜
          
「回り込む時は円を描くんだ!足を使え!」

「対角線を意識しろ!単調じゃ当たらねぇぞ!」


「馬鹿野郎!!ガードを下げるな!死にてぇのかっ!!!」





夜の帳が下り、月明かりの下、

撃ち込む鈍い音と激しい息遣いが交差する。

時に一定のリズムを刻み、時に不規則なリズムへと変化する。


それはやがて闇に溶け、いつもの静寂を取り戻す。







「おぉい・・・・もう終わりか?・・・口ほどにもねぇなぁ・・・。」


「ハァ・・ハァ・・・・・っるせーよ・・・」






ここへ来た頃はただ闇雲に突っ込んでくるだけだったが、

・・・・随分と、いい動きになってきた。


こいつぁ気ぃ抜いてると一発もらっちまうかもな・・・・。







俺たちの拳は主を守るために在る。

そいつは人を傷つけ、殺めることさえある。



だからこそ、俺たちはその恐ろしさや痛みを

身をもって知っていなけりゃいけねぇ。



大地に叩きつけられ、土を噛み、

鉄錆びの味を知って初めてわかることがあるんだ。







「痛ぇか?・・・

また傷口が開いちまったな・・・・

・・・待ってろ。薬を取ってくる。」






月が隠れて足元が見えねぇが・・・

何百回も歩いた道だ。

今じゃここで鳴いてる蟋蟀より詳しいかもな・・・







「ぅん・・・・・・誰だっ!?


・・・・・・あ、マリアナ・・・さん?」






「・・・・・見てたんですかい?

・・・・あまり、ご婦人が見ても面白いもんじゃありませんぜ。」





「・・・・・・・・ボソ」


「・・・・え?」





「・・・・・・薬・・・・。」


「あ・・あぁ・・・・どうも・・・・。」






フッ・・・・どうやら彼女も蟋蟀より詳しいようだ。





庭師 ブルーノ - -
Bambino

         

 

「フゥッ・・・こりゃまた暑くなってきたな・・・・」

 

 


俺ぁブルーノ。この屋敷で庭師をやってる。


庭師といやぁ聞こえはいいが、


薔薇の手入れの他に頼まれたことは何でもやる何でも屋だ。

 


あぁ、頼まれれば、何だってやるさ。・・・何でもな。

 



・・・おっと、一服してるのは内緒だぞ。

 

 

 

 


「おーーーい!バンビーノ!ちょっと来い!!」

 

 

 

 


この時期の薔薇は目が離せねぇ。


急激に気温が上がる初夏は病害虫との戦いだからだ。


これだけの広大な薔薇園・・・一度蔓延したら全滅しかねねぇ。

 


二番花のシュートの剪定や誘引、中耕や追肥や水のやり方一つにも神経を配らなきゃな。


細けぇことだが、そこのバランスが崩れると病気の原因になることもあるからだ。

 

 

 

・・・あの小僧にもよく言っておかなきゃいけねぇな。

 

 

 

 


「おい、バンビーノ!マルチングのやり方を教えるから、よく見とくんだぞ!」

 


「あ、あぁ・・・つうか、親方!俺には・・・リクって名前があんだよ!


バンビバンビってうるせぇよ!」

 


「ガッハッハッ!!俺からすりゃぁお前なんざ、まだまだひよっ子のバンビーノだ!


お前が俺に一発くらわすことができたら考えてやる。ガッハッハッハッ!」

 


「うるせぇ!!畜生ッ・・・」

 

 

 

 

 


フッ・・・何だかんだ言いながらも懐いてくる・・・この小僧の成長が楽しみで仕方ねぇ。

 


ドュフナーさんが拾ってきたこの野良犬がどう化けるのか・・・な。

 





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